平成30年 司法試験 論文式試験 国際関係法(公法系) 第1問
問題文と公式資料を一つにまとめ、出題の趣旨と採点実感の要点をすぐ確認できる学習ページです。
〔第1問〕(配点:50) A国(上流国)とB国(下流国)は,両国の国境を隔てて,A国の南側とB国の北側が隣接して おり,国際河川であるC川が両国を北から南に流れている。 A国及びB国は,C川を利用した水力発電に関する共同事業を計画し,同計画に関するT条約を 締結し,同条約は両国の批准を経て発効した。T条約は,両国がB国北部のX地点に水力発電用の Xダムを共同で建設し,両国に送電することを内容としていた。A国に隣接するB国北部は農業地 帯であることから,XダムはC川の水量への影響が少ない方式で建設することも合意された。Xダ ムからA国に送電されることになる電力は,A国の経済発展に不可欠の基礎となるものであった。 なお,T条約には終了に関する規定はない。 ところが,その後,B国において,農業団体から,計画を予定どおり実施した場合には農業用水 にかなりの影響が生ずるとして,計画の見直しを求める声が高まった。これを受けて,B国は既に 開始していたXダムの建設を一方的に中止した。 これに対してA国は,両国で建設予定であったXダムに代わるものとして,A国内のY地点にY ダムを建設し,水力発電を開始した。Yダムは,C川を分流させ,C川の水量の減少を伴う方式で あった。このため,B国領域内のC川の水量が激減した。これに対して,B国は,T条約を一方的 に終了させる意思をA国に通告した。 この結果,農業用水の確保ができなくなったB国の農民が,B国の首都にあるA国大使館前でデ モを行う事態が連日生じた。デモは日増しに激しさを増したが,B国政府は警備体制の強化を行わ なかった。そうした中,ついに一部の農民がA国大使館を占拠し,大使館員を人質にとって立てこ もった。A国は,B国に対して大使館員の安全確保と大使館の明渡しを要請したが,B国政府はこ れに積極的に対応しなかった。こうした中,B国大統領は,大使館を占拠した農民の行動を支持す る声明を公式に発表した。 A国とB国は,いずれも外交関係に関するウィーン条約及び条約法に関するウィーン条約の当事 国である。 以上の事実を基に,以下の設問に答えなさい。 〔設 問〕 1.A国は,B国によるXダムの建設中止に対して,Yダムを建設し,水力発電を開始した。こ の行為は国際法上どのように評価されるかについて論じなさい。 2.B国は,T条約の終了を国際法上正当化し得るか,理由を付して論じなさい。 3.B国のA国大使館をめぐるB国政府ないしB国大統領がとった一連の対応は,国際法上のい かなる違反を犯していると考えられるかについて論じなさい。