平成30年 司法試験 論文式試験 知的財産法 第2問
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〔第2問〕(配点:50) 観光都市であるK市の市バス運転手であったXは,K市を退職後,K市のガイドマップを作成し て販売することを思い立ち,市バスだけを利用して巡ることができる知られざる観光スポットを厳 選したガイドマップというコンセプトを考えた。ガイドマップに載せる観光スポットを探す作業は, K市を退職した後輩のYが担当し,Yは3か月をかけてK市を歩き回って,市バスの停留所近くの 知られざる小さな寺社など多くの観光スポットを探し出し,その中から人気が出そうなガイドマッ プに載せるべき観光スポット50か所(以下「本件観光スポット50か所」という。)を厳選した。 Yは,K市が作成し無料で自由な使用を認めている標準的なK市の地図に,本件観光スポット50 か所を書き入れるとともに,市バスの路線図と停留所名も詳細に書き込んで,一枚物のガイドマッ プAを作成した。なお,ガイドマップAには,X及びYの氏名は表示されていない。 以上の事実関係を前提として,以下の設問に答えなさい。なお,設問1及び設問2は,それぞれ 独立したものであり,相互に関係はないものとする。 〔設 問〕 1.ガイドマップAは,イラストなどは一切載っておらず,通常の地図の表記ルールに従った表 現の域を出ていないが,市バスの路線図と停留所名が詳細に書き込まれ,K市の知られざる魅 力的な観光スポットが満載であるとして,発売後たちまち人気が出た。Zは,X及びYに無断 でガイドマップAを利用し,本件観光スポット50か所をイラストとして表現したほかは,ガ イドマップAと全く同じ地図Mを作成し,その販売を開始した。Xは,Zに対して,地図Mの 販売はXの著作権を侵害するものであるとして,地図Mの販売の差止めを求める訴訟を提起し た。Xは,どのような主張をすべきか。これに対するZの反論として,どのような主張が考え られるか。それぞれの主張の妥当性についても論じなさい。 2.ガイドマップAは,イラストを多用しており,それらのイラストは,XとYが同程度の貢献 をして協力して描いた個性的な図柄のものであった。 (1) Yは,ガイドマップAをインターネット上で配信し,その際,XとYの氏名を著作者名と して表示した。インターネット配信によってガイドマップAは世間に広く知られることとな ったため,ガイドマップAの売上げは飛躍的に伸びた。Yは,この配信についてあらかじめ Xと協議をしたものの,Xは,インターネット配信により自分の名前が世界中に知られるこ とに不安を感じ,配信に同意していなかった。Xは,Yに対して,YのガイドマップAの配 信行為はXの著作権及び著作者人格権を侵害するものであるとして,配信行為の差止めを求 める訴訟を提起した。Xはどのような主張をすべきか。これに対するYの反論として,どの ような主張が考えられるか。それぞれの主張の妥当性についても論じなさい。 (2) K市に所在するタクシー会社Sは,社内で観光タクシー運転手になるための資格試験を実 施しているところ,今年度の試験は,ガイドマップAの中の本件観光スポット50か所の名 称を空欄にし,この空欄に正解の名称を書き入れるように求める問題(以下「本件出題」と いう。)であった。なお,本件出題に係るガイドマップAにX及びYの氏名は表示されてい ない。また,Sは,本件出題も含む過去20回分の試験の全問題とその解答(解説は付いて いない)を年度順に掲載した『観光タクシー資格試験問題集』(以下「本件問題集」という。) を発行し,社内の希望者に配付しているが,本件問題集においてガイドマップAが使用され た問題は,今年度分のみであった。Sは,本件出題及び本件問題集の発行について,X及び Yに無断で行っている。X及びYは,Sに対して,本件出題及び本件問題集にガイドマップ Aを利用したことは,X及びYの著作権及び著作者人格権を侵害するものであるとして,損 害賠償を求める訴えを提起した。これに対するSの反論として,どのような主張が考えられ るか。その妥当性についても論じなさい。なお,損害額については論じなくてよい。 論文式試験問題集[労 働 法]