平成29年 司法試験 論文式試験 租税法 第1問
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〔第1問〕(配点:50) 甲市では,住民有志により結成された実行委員会が,町おこしの一環として,落ち武者伝説をテ ーマにした「甲隠れ里祭り」の開催を企画していた。この祭りは,地域の旧跡を保全するとともに, その魅力を多くの人にアピールし,甲市の全国的な知名度を向上させることを目的としていた。 甲市の住民であるXは,この企画に賛意を示し,自らが営む文房具店の在庫から事務用品(時価 20万円相当)を実行委員会に贈与することを決め,引き渡した。 他方,甲市で旅館業を営んでいた株式会社A(以下「A社」という。)も,この企画に賛意を示し, 実行委員会に対して協賛金200万円の支出を行った。 実行委員会は活発な宣伝活動を行い,全国ニュースにも取り上げられたため,市外からの観光客 も多く集まって,祭りは盛況であった。なお,「甲隠れ里祭り」の宣伝に際しては,X及びA社を含 め,協賛金等を拠出した者の名前等は全く明らかにされなかった。 祭りの後,A社の代表取締役社長であるYは体調を崩して入院した。Yは,親から社長を引き継 いで以来,経営不振に陥った近隣の旅館を買い取ってファミリー向けに改装し,新たな客層を呼び 込むことで,観光客の低落傾向が続く甲市において,むしろ客室稼働率を高めることに成功してい た。30年以上代表取締役として精力的に経営を担ってきたYであったが,この入院を機に引退を 考えるに至った。そこで,自らは代表権のない非常勤取締役に退くとともに,長男であるZを新た に代表取締役社長として,事業を引き継がせることとした。代表取締役交代については,登記がな され,また,取引先や従業員にも周知された。この代表取締役の交代を受けて,A社は,Yに対し て分掌変更による退職手当の支給を行った。 Yは,これまで週5日出勤していたところ,上記交代後は出勤も週2日となり,報酬も大幅に減 額され,従来の3割程度の支給額にとどまることとなった。それまでYが管理していたA社の印鑑 や預金通帳についても,Zが管理することになった。その一方で,Yは依然として取締役会には必 ず参加していた。Zも,重要な役職の異動及び給与査定などの人事上の決定や,取引先の選定とい った営業上の決定について,度々Yに相談し,その意見に従っていた。 以上の事案について,以下の設問に答えなさい。 〔設 問〕 1 Xが「甲隠れ里祭り」実行委員会に贈与した事務用品については,Xの事業所得における総収 入金額の計算上どのように扱われるか。根拠条文と理由を付して述べなさい。 2 YがA社から支給された退職手当は,所得税法上,いかなる所得に分類されるか。退職所得と いう所得の種類が設けられている趣旨・目的を明らかにした上で,理由を付して述べなさい。 3(1) A社が行った「甲隠れ里祭り」実行委員会への協賛金の支出は,A社に対する法人税の課税 上,どのように扱われるか。根拠条文と理由を付して述べなさい。 (2) 仮に,A社の社名が,協賛企業として,実行委員会が提供する祭りの専用ホームページ及び パンフレットに表示されていた場合,A社に対する法人税の課税上,協賛金の支出はどのよう に扱われるか。(1)における結論との異同を踏まえ,根拠条文と理由を付して述べなさい。