平成29年 司法試験 論文式試験 国際関係法(公法系) 第1問
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〔第1問〕(配点:50) A国のX州は,人口の大多数がA国の主要民族とは人種,言語,宗教等を異にする少数民族によ って構成されていて,かねてより独立運動が盛んであった。A国はX州の住民の不満を解消するた めに,2015年4月にX州に対して大幅な自治権を認めたが,X州の住民の独立への要求は収ま らなかった。同年6月,X州自治政府は,A国政府の反対を押し切ってX州のA国からの独立の可 否を問う住民投票を実施し,90%を超える圧倒的多数が独立を支持した。この住民投票の結果を 基に,X州自治政府は同年8月,X国憲法を制定して一方的に独立宣言を行った。この時点でX国 政府(A国から見た場合は「X州自治政府」。以下同じ。)はX国(A国から見た場合は「X州」。以 下同じ。)の全領域を実効的に支配し,A国の軍隊もX国領内には駐留していなかった。X国政府は, 同年9月,各国にX国の独立を通告するとともに国家承認を求める書簡を送付し,X国と境界を接 するB国を始め多くの国が国家承認の通告を行った。他方,地理的に離れていて利害関係の薄いC 国やD国は,X国の要請には応えなかった。同年10月,X国政府は国連への加盟を申請し,同年 12月,国連総会は,国連安全保障理事会の勧告を受けてX国の加盟申請を審議し,賛成152, 反対23,棄権18でX国の加盟を承認した。国連総会の投票において,A国やD国は反対票を投 じたが,B国やC国は賛成票を投じた。その後D国は,2016年5月にX国と通商航海条約を締 結した。なお,A国~D国は,いずれも国連加盟国である。 以上の事実を基に,以下の設問に答えなさい。 〔設 問〕 1.X国の要請に応じずに国家承認の通告をしなかったC国とD国は,本問に書かれているその 後の行動を通して,X国を承認し同国と国際法上の国家間関係を築いたと言えるかどうか,理 由を付して答えなさい。 2.X国の独立を承認せず,その国連加盟にも反対したA国は,2016年1月,X国の了解を 得ずにA国とX国との間の境界線を越えて,小規模のA国軍部隊をX国内のS地方に派遣した。 その理由をA国政府は,S地方で起こった暴動鎮圧のためと説明した。このA国の行動は国際 法上正当化されるかどうか,理由を付して論じなさい。 3.A国は,2014年4月,B国との間で国境画定条約を締結し,X州とB国との間を流れる R川のX州側の川岸に沿った線をもって国境とすることに合意した。X国は,独立宣言後,A, B両国間の国境条約はB国とX国との間の境界部分に関しては無効であると主張し, 「国境に沿 って流れる河川を国境にする場合は,航行可能な水流の最深線を国境とする国際法の原則」を 適用して,R川の航行可能な水流の最深線が国境であると主張した。このX国の主張は国際法 上認められるかどうか,論じなさい。また,X国がこのような主張をしたため,B国はX国を 承認するとした通告を2016年2月になって撤回するとX国に伝えた。このB国の行為は国 際法上合法と言えるかどうか,論じなさい。