平成28年 司法試験 論文式試験 国際関係法(公法系) 第1問
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〔第1問〕(配点:50) A国とB国は同じ海洋に面して陸で隣接する二つの国である。いずれも1960年代に独立し, 直ちに国際連合(以下「国連」という。)に加盟した。独立以来両国間には国境をめぐる紛争は発 生してこなかったが,2000年代に入って,A国の沿岸の一番近い地点から約50キロメートル, B国の沿岸の一番近い地点から約30キロメートルの位置にある小島X島の帰属をめぐって紛争が 生じた。X島は古くからA国の漁業者が漁業活動の拠点として使用してきた。A国は独立の際X島 を自国の領域に編入する措置をとり,以来X島周辺での漁業活動に関する規制や数百人のX島住民 に対する住民登録,徴税等の行政権を行使してきた。このA国の行動についてB国からは特段の抗 議等はなかった。しかし,B国は2002年頃からX島が地理的にA国よりもB国に近接している ことを理由にX島に対して領有権を主張するようになり,2006年にはB国の国内法に基づいて 領域編入を行った。A国は直ちにこれに抗議した。その後X島の帰属をめぐって両国間で外交交渉 が断続的に持たれたが進展はみられなかった。 2015年6月22日,B国の軍隊がX島に上陸して島を占拠し,A国の漁業者及び住民を島か ら強制的に退去させ軍の一部を常駐させた。翌23日,A国は国連の安全保障理事会(以下「安保 理」という。)の開催を要請した。同月24日に開催された安保理では,上記の事態を議題として 取り上げ,その中で,B国の軍事行動を非難し,直ちに軍をX島から撤退させ,A国の漁業者及び 住民の帰島を可能にするようB国に要求する決定を内容とする決議案が,複数の理事国によって共 同提案された。 以上の事実を基に,以下の設問に答えなさい。なお,A国及びB国は,いずれも安保理の理事国 ではない。また,両国とも国連以外の安全保障や紛争解決に関する条約には参加していない。 〔設 問〕 1.前記の安保理決議案について,投票の結果が仮に賛成10,反対3,棄権2であり,5つの 常任理事国のうち4か国は決議案に賛成したが,B国と友好関係にあるC国は棄権した場合, 同決議案は採択されるか,それとも否決されるか,理由を付して答えなさい。 2.前記の安保理決議案においてB国の軍事行動を非難する国際法上の根拠について,論じなさ い。 3.前記の安保理決議案が仮に全会一致で採択された場合,B国はX島から軍を直ちに撤退さ せ,A国の漁業者及び住民の帰島を可能にする措置をとるべき国際法上の義務が生ずるかどう か,また,B国が決議を無視して軍を駐留させ続け漁業者等の帰島を可能にしなかった場合, 安保理は国際連合憲章上どのような行動をとることができるかについて,答えなさい。 4.前記の安保理決議案が仮に必要な賛成票が得られず否決された場合,国連総会がこの事態を 議題として取り上げ,同様の内容の決議を採択することができるか,論じなさい。