平成27年 司法試験 論文式試験 労働法 第2問
問題文と公式資料を一つにまとめ、出題の趣旨と採点実感の要点をすぐ確認できる学習ページです。
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〔第2問〕(配点:50) 次の事例を読んで,後記の設問に答えなさい。 【事 例】 Y社は,クッキー,チョコレート,アメ等多品種の菓子を製造・販売する株式会社であり,多 くのパートタイマーを活用することで人件費を抑制し,多大な利益を上げてきた。Y社は,正社 員300名のほか,パートタイマー850名を雇用しており,大阪市の本社のほかに全国各地に 計8か所の営業所及び計3か所の工場を有していた。Y社には,正社員とパートタイマーの双方 が加盟する労働組合(以下「労組」という。)があり,Y社との間に,労使協議や団体交渉等の ルールについて規定した期間の定めのない労働協約を締結していた。労組には,全正社員の8割 に当たる非管理職の正社員全員,パートタイマーの2割が加入しており,本社及び全ての営業所・ 工場に分会を有していた。 Y社では,平成20年のいわゆるリーマンショックによる売上げの激減により,経営状況が目 に見えて悪化し,賃金も全く増額できなくなったほか,いくつかの菓子製造ラインが閉鎖される など事業の縮小が目立つようになり,転職のために辞めていく従業員も次第に増えていった。 Zは,労組の委員長であったが,この様子を見て危機感を覚え,他の執行部のメンバーと相談 し,会社との間に,雇用の維持を認めさせる新たな協約を締結することを目指して,平成26年 5月にY社の社長甲らと内密の懇談の場を数回持った。Zは,自分が委員長に選出された選挙の 折,甲が自分を推薦して「我が社の労組にはZが委員長としてふさわしい。」との発言を繰り返 していたこと,自分が委員長に選出されてからも親しい交流を続けていたことなどから,甲が自 分の要請を理解してくれるものと期待していた。 上記の懇談の場において甲は,「5%の基本給カットをのんでくれるなら,少なくとも正社員 については雇用は維持できるよう会社としても最大限の努力をする。」とZに伝えた。賃金カッ トをのめば組合員の雇用の維持を保障する協約を結べると判断したZら執行部は,組合規約に定 められた「協約締結権限」を早急に取得する必要があると考え,執行部内で対応を協議したとこ ろ,組合規約には,「協約締結権限を執行部が得るためには組合大会を開催し,全組合員の過半 数の賛成を得る必要がある。」と規定されていた。しかし,全組合員の招集をはかるには時間と 手数がかかりすぎると判断した執行部は,「重要事項に該当しない問題については各分会におけ る単純多数決の結果を集約し,組合全体として賛成が多数であれば執行部に協約締結権限が付与 されたものとする。」という組合規約の規定に着目し,かつ,実際には労働協約の締結権限につ いても,ここ10年内に5回締結された労働協約は全てこの方式で締結権限が認められてきた事 実を確認した上で,今回もこの方式により,全分会における単純多数決の結果を集約したところ, 全組合員の過半数がZら執行部の方針を了承したことを確認した。 その後,平成26年7月10日付けで労組とY社との間に労働協約が締結され,予定どおり5 %の基本給カットが規定されたが,同カットは平成27年4月から行うこととされ,また,「平 成26年冬の賞与を前年より5%アップすることで緩和措置とする。」との規定も設けられてい た。さらに,「会社は可能な限り雇用の維持に努め,人員整理の必要性が生じた場合は組合と協 議の上,対応を決定するものとする。」との規定もあった。 菓子を製造するA工場の分会に所属する組合員であるXは協約内容を見て,不満を抱き,Zに 「組合大会も開催せずに,5%の基本給カットをのんだことは許し難い。」と問い詰めたところ, Zは,「確かに組合大会は開催していないが,従来の慣行に従って分会における単純多数決の結 果を集約しているので問題はない。」と回答した。 そこで,Xは,5%の基本給カットの実施に不安や疑問を抱いていた他の5名の組合員と相談 し,Zら執行部の了承を得ずに独断で「刷新派」と称するグループを結成した。これに対し,甲 はXを呼んで,「労組を混乱させてはいけない。刷新派などと称するグループは解散しなさい。」 と強く命じたが,Xは「お断りします。」と答えた。その後,刷新派は,自分たちの主張を広め るため,「賃金カットは許さない」,「会社は5%の基本給カットを撤回せよ」などと記載した縦 10センチメートル,横2センチメートルのリボンを左胸部に着装して始業時刻から30分間業 務に従事し,30分後には当該リボンを取り外すという行動に出た。リボンを着装した組合員は, Xを含め全員がA工場の菓子製造のラインで働いていた。 Y社はこれに対し,Zら執行部にXらの行動が労組の指導によるものでないことを確認した上 で,リボンの着装をやめるようXらに業務命令を発したが,Xらがこれに従わなかったため,就 業規則第12条に基づき,リボンを着装して業務に従事した組合員全員を戒告の懲戒処分に処し た。 〔設 問〕 1.Xが,平成27年4月以降の賃金につき,5%カットされた基本給分の差額を請求して訴訟 を提起した場合,この請求は認められるか。想定される論点を検討した上で結論を示しなさい。 2.Xらは,戒告の懲戒処分は不当であると考えている。Xらがこの懲戒処分につき救済を求め るには,どのような機関にどのような救済を求めることが考えられるか。想定される論点を検 討した上で結論を示しなさい。 【Y社就業規則(抜粋)】 (懲戒) 第12条 従業員が次のいずれかに該当するときは,情状に応じ,けん責,戒告又は減給とする。 1 業務中に許可なく職場を離れ,又は,業務と関係のない行為を行ったとき。 2 業務命令に反したとき。 (以下略) 論文式試験問題集[環 境 法]