平成27年 司法試験 論文式試験 労働法 第1問
問題文と公式資料を一つにまとめ、出題の趣旨と採点実感の要点をすぐ確認できる学習ページです。
〔第1問〕(配点:50) 次の事例を読んで,後記の設問に答えなさい。 なお,職業安定法に言及する必要はない。 【事 例】 Y1社は,主に製造業務の請負等を目的として,平成元年頃から,一般労働者派遣事業の許可 を取得して労働者派遣事業を展開しつつ,業務請負事業も行っていた。Y1社は,自動車製造を 業とするY2社とは平成18年頃から業務請負契約を締結して取引を行っていた。当該業務請負 契約の契約書によれば,契約期間は6か月とされ,Y1社がY2社から設備,事務所等を無償で 借り受け,Y1社の雇用する従業員をY2社A工場(以下「A工場」という。)の自動車組立て ラインに派遣して組立て作業に従事させ,Y2社は月間生産台数に応じた額の報酬をY1社に毎 月支払うものとされていた。Y1社・Y2社間に資本関係や人的関係はない上,Y1社の取引先 はY2社に限られておらず,また,Y1社によるXを含む作業員(以下「Xら」という。)の採 用面接にY2社の社員が立ち会ったなどの事情は認められない。 Xらは,Y1社との間で雇用期間6か月,就労開始日を平成20年4月1日とする雇用契約を 締結し,雇用契約で指定されたA工場の就業場所において自動車組立て作業に従事すること,こ れに対してY1社はXらにY1社就業規則に定めた給与を支給することとされていた。雇用期間 の始期と終期は,Y1社・Y2社間の業務請負期間のそれと一致していた。Xらは,自動車組立 てラインにおいて自動車部品をY2社作成のマニュアルに従って取り付ける作業を行い,同ライ ンにおいてY2社の従業員と一緒に作業していた。A工場にはY1社の正社員が常駐していたが, Xらは作業についてY2社の社員からも直接指示を受けていた。 Y1社及びY2社は,平成22年9月1日,A工場の所在する地域を管轄する労働局から,A 工場におけるXらの勤務実態は業務請負ではなく労働者派遣であり,労働者派遣事業の適正な運 営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(以下「労働者派遣法」という。)違反の事実が あると認定され,業務請負契約を解消して新たに労働者派遣契約を締結するようにとの行政指導 を受けた。 これを受けて,Y1社及びY2社は業務請負契約の期間満了日である同年9月30日をもって 業務請負契約を終了し,同年10月1日から新たに6か月の契約期間を定めた労働者派遣契約を 締結した。それと同時に,Y1社はXらを派遣労働者とする雇用契約を締結した。新たな雇用契 約は,従前と同一の労働条件で同一の就業場所において同一の作業に従事することを内容とした ものであった。Xらは,同年10月1日から就労を開始し,その後,同一内容の雇用契約を反復 更新した。 ところが,Y2社は,平成24年秋からY2社を取り巻く経営環境の悪化により生産規模の縮 小を余儀なくされ,平成24年12月10日に,Y1社との労働者派遣契約に定める規定に基づ き,平成25年1月20日をもって労働者派遣契約を解約する旨Y1社に通知した。そこで,Y 1社は,A工場で作業を行うXらの雇用契約が同年3月31日をもって期間満了とされていたこ とから,Xらに対し,別の就業場所を紹介してそこで作業を行うよう打診したところ,Xは,期 間満了後も引き続きA工場で同一の作業に従事することを希望し,同打診を断ったが,Xらのう ちX以外の者は,いずれも同打診を受け入れた。Y1社は,Y2社が同年1月20日に労働者派 遣契約を解約したためXの就労する場所がない上,他の発注先からの契約打切りによりY1社の 財務状況が急速に悪化した事情もあり,30日間の予告期間を置いた上で,同年2月28日付け でXを解雇した。 〔設 問〕 1.Xは,本件就労は労働者派遣法違反であるのでY1社との雇用契約は無効であり,Y2社と の間に雇用契約が成立していたと主張し,Y2社との雇用関係上の地位の確認を請求して訴え を提起した。予想されるY2社からの反論を踏まえつつ,法的な論点を指摘して,Xの請求の 当否を論じなさい。 2.Xは,Y1社に対して,平成25年2月28日の解雇が無効として,Y1社との間の雇用関 係上の地位の確認を請求して訴えを提起した。この請求の当否を論じなさい。 3.仮に,前記【事例】において,Y1社が,Xを解雇せず,平成25年3月31日をもって期 間満了によりXとの雇用契約が終了したものと扱い,これに対してXがY1社との間の雇用関 係上の地位の確認を請求して訴えを提起した場合におけるその請求の当否を論じなさい。