平成26年 司法試験 論文式試験 租税法 第1問
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〔第1問〕(配点:50) 1 Aは,昭和58年10月に司法試験に合格し,司法修習生を経て,昭和61年4月に,不動産 業者であるBから,甲県乙市内のビルの一階の一室を3年の期間で賃借し,Aの名前を冠した 法律事務所を開設して,弁護士業務を始めた。Aは,同室を賃借するに当たり,Bに対して, 乙市の不動産取引の慣行に従い,3か月分の家賃相当額の敷金のほか,権利金として200万 円を支払った。Aは,同事務所の営業時間を平日の午前9時から午後6時までとし,乙市を管 轄している税務署から青色申告の承認を得て,その後,毎年,納税申告を青色申告で行ってき た。 Aは,事務所開設と同時に,事務員として,法学部を卒業したCを採用し,裁判所等に提出 する書面のワープロによる浄書や経理等の仕事をさせた。近隣の法律事務所の事務員への給料 は,おおむね月額15万円及び賞与年額80万円の年合計260万円であったが,Cが法学部 卒であることを考慮して,月額20万円及び賞与年額100万円の年合計340万円を支払っ た。 Aは,昭和62年4月頃,司法試験受験生であったDと知り合い,同年結婚し,乙市内のマ ンションで同居し,生計を一にした。Dは,結婚後も受験勉強を続けていたが,Aの事務所の 繁忙期やCの休暇時に,無給で,事務所内で,電話応対やAが作成する書面のワープロによる 浄書等の仕事をしていたところ,平成2年1月,Aの事務所の顧問先が増え,依頼案件も増加 したことから,正規の事務員としてフルタイム(午前9時から午後6時まで)で働くようにな った。そこで,Aは,Dに対して,毎月給料を支払うこととし,その金額として,Dの勤務時 間及び内容は,Cとは異ならなかったが,Dが妻であることから,Cの給料の1.5倍の年額 510万円を支払った。Aは,Dをフルタイムで稼働させるに当たって,税務署長に対し,D の氏名,職務内容及び給与の金額等の法令が要求する事項を記載した書面を提出した。なお, 乙市内にある法律事務所のうち,経営者である弁護士がその妻をフルタイムの事務員として雇 っている事務所は7事務所あり,支払っている給料の年額の最低額は300万円,最高額は4 50万円であり,7事務所平均では400万円であった。もっとも,妻が司法試験受験生であ る弁護士はいなかった。 Dは,平成4年10月に司法試験に合格し,司法修習生を経て,平成7年4月に乙市内のビ ルの一室を借りて,Dの名前を冠した法律事務所を開設し,Aと同じ弁護士会に所属して弁護 士業務を始めた。AとDの両事務所の経費は別であり,それぞれの事務所において記帳がなさ れ,Dも税務署から青色申告の承認を得て,その後,毎年,納税申告を青色申告で行った。も っとも,Aは,Dが弁護士登録した直後から,Dに対して,Aが行っていた弁護士業務の一部 を依頼し,その対価として,毎年定額の報酬をDに支払った。その金額は,Dが営む弁護士業 務の総収入金額のうち3分の1程度を占めていた。 2 Aは,Bに対して,事務所の賃貸借期間満了の都度,更新料を支払うとともに賃料を増額して, 契約を継続してきた。その後,Bは,平成24年1月,同業者であるEに対して,Aの事務所 (以下「旧事務所」という。)が入居していたビルを売却しようと考えたが,Eから,Aが旧事 務所を明け渡さなければ買うことはできない旨言われたため,Aに対して,旧事務所の明渡し を求めた。 Aは,移転先としては乙市に所在する地方裁判所の近くにあるビルが望ましく,旧事務所と 同様にビルの一階を借りるとすれば,権利金として300万円を要するだけでなく,新賃料は 旧事務所の賃料より高額となる可能性があり,さらに,引越費用,電話工事等の内装工事費用 の支払が必要となると考えた。そこで,Aは,Bとの間で,事務所明渡しに当たって必要とな る支出の保証を求めて交渉し,それと並行して,移転先のビルを探した結果,不動産業者Fが 所有する地方裁判所前新築ビル一階の一室(以下「新事務所」という。)を借りることとなった。 そして,AとBは,同年4月10日,旧事務所の明渡しに関して,以下の事項を合意し,A は,その合意に従って,旧事務所を明け渡した。 (1) AとBとの賃貸借契約は,平成24年4月30日限りで終了する。Bは,同日,Aに対して, Aが賃借権を放棄する代償として300万円を支払い,旧事務所の明渡しを受けるものとす る。 (2) Bは,Aに対して,旧事務所からの引越費用及び新事務所の電話工事等の内装工事費用の一 部補填として,旧事務所明渡し時に400万円を支払う。 以上の事案について,以下の設問に答えなさい。 〔設 問〕 1 Dが司法試験に合格する前のA法律事務所で事務員としてフルタイムで勤務していた際に,A がDに支払った給料は,Aの所得の金額の計算上,どのように扱われるか,関係する所得税法の 規定の趣旨に言及しつつ,その金額が相当であったかも含めて検討せよ。 2 Dが弁護士となった後に,AがDに支払った報酬は,Aの所得の金額の計算上,どのように扱 われるか,異なる見解にも言及しつつ自説を述べよ。 3 AがBから支払を受けた問題文2(1)及び(2)の金銭は,Aの所得の金額の計算上,それぞれどの ように扱われるか,異なる見解にも言及しつつ自説を述べよ。