平成26年 司法試験 論文式試験 労働法 第1問
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〔第1問〕(配点:50) 次の事例について,弁護士であるあなたが,X1,X2及びX3から,Y社に対し,訴えの提起 を行いたいとの相談を受けた場合に検討すべき法律上の問題点を指摘し,それについてのあなたの 見解を述べなさい。 なお,Y社の就業規則(抜粋)は,後記のとおりである。 【事 例】 Y社は,自動車製造等を業とする株式会社である。 X1ら50名は,いずれも機械工としてY社に採用され,その後一貫して甲工場にあるスポー ツカー部門においてエンジンの組立て作業に従事しており,短い者でも十数年間,長い者は二十 数年間の経験を持つ,熟練機械工であった。 X2及びX3の両名は,いずれも,平成元年3月に工学修士の学位を取得し,同年4月,Y社 にスポーツカー用エンジンの開発設計の研究者として採用され,その後一貫して同スポーツカー 部門において新型エンジンの開発設計を担当してきた。 Y社は,自動車製造業界全体が不況にあえいでいた時期に,あえて大規模な設備投資と事業拡 大を推し進めたことが災いし,平成24年期には累積赤字が50億円を超える事態に陥ったため, 採算のとれていない同スポーツカー部門の閉鎖を決定した。 そこで,Y社は,平成25年6月6日,X1ら50名の熟練機械工に対し,甲工場で生産中の 小型乗用車の塗装等他職種への異動を命じたが,X1は,機械工としての勤務を希望し,当該命 令に応じていない。なお,Y社は,当該命令を行うに当たり,X1ら50名の意向を一切聴取し なかった。 また,Y社は,同年6月20日,X2及びX3に対し,早期退職募集と再雇用の提案を行い, 通常の退職金に加えてその1割を増額した割増退職金の支給を提示した。Y社が提案した再雇用 の内容は,甲工場内の営業事務所の営業職として採用することと,エンジン開発設計の研究者の みを支給対象とする研究特別手当(月額2万円)がなくなることを除き,従来と同様の労働条件 であった。 早期退職募集の応募期限は同年8月30日であったところ,X2は,同日,Y社に対し,前記 再雇用の提案の内容につき,後に裁判で争うことを伝えた上で,早期退職募集及び再雇用に応ず る旨を申し出たが,Y社はこれを拒否した。また,X3は,前記応募期限までに早期退職募集に 応募せず,Y社に対し従前の労働条件で雇用を継続するよう求めた。 そこで,Y社は,同年10月31日付けでX2及びX3を解雇する旨の意思表示を行った。 【就業規則(抜粋)】 (人事異動) 第8条 会社は,業務上必要がある場合には,従業員に対し,あらかじめその意向を聴取した上で, 就業する場所及び従事する業務の変更を命ずることがある。 2 前項の場合,従業員は正当な理由なくこれを拒むことはできない。