平成26年 司法試験 論文式試験 国際関係法(私法系) 第2問
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〔第2問〕(配点:50) Xは,日本に居住する日本人であり,甲国には営業所や財産を一切有していない。他方,Yは, 甲国法に基づき設立され甲国に主たる営業所を有する,医療機器の製造販売を業とする会社である。 Yは,日本においては事業を行っておらず,営業所や子会社も有していない。 Yは,自社製品を日本で販売するために,日本において子会社(以下「本件子会社」という。) を設立する計画(以下「本件計画」という。)を有している。Yは,本件計画のために,本件子会 社の設立に関する事務をXに委任することとし,その対価としてXに対して報酬の支払を約束した (以下,この契約を「本件契約」という。)。 本件契約には管轄に関する合意や当該報酬の支払地についての合意はなかったものとし,以下の 1から3までの設問は各々独立しているものとして答えなさい。 〔設 問〕 1.Xは,本件子会社が設立された後にYが自社製品を本件子会社に販売する場合に備えて,Yと 本件子会社との間で締結される売買契約の契約書の作成を検討し始めた。甲国は,国際物品売買 契約に関する国際連合条約(平成20年7月7日条約第8号)(以下「条約」という。)の締約国 である。 Yは,Yと本件子会社との売買契約には,条約ではなく専ら甲国の国内法源である同国の実質 法の適用を欲している。日本が法廷地国となった場合,「この売買契約は甲国法による」との条 項を契約書に設けるだけで,当該売買契約を確実にYの意向に沿ったものとすることができるか。 「隔地者間の契約は,承諾の通知を発した時に成立する」と定めている甲国民法P条の規定に言 及しながら答えなさい。なお,条約第1条第1項(b)の規定の適用はないものとする。 2.本件契約には,準拠法が明示的にも黙示的にも定められていなかったとする。本件契約の準拠 法として推定されるのはいずれの国の法か。 3. 本件計画が本件子会社の設立登記を待つだけの段階に至った時,経営状態が急速に悪化したY は,日本への進出計画を断念し,このことをXに通知した。そこで,Xは,未払のままになって いる報酬の支払をYに要求した。これに対して,Yは,未払の報酬はないと主張し,Xに対する 債務不存在確認の訴えを甲国裁判所において提起したところ,当該裁判所はYの請求を認容する 判決をし,この判決は確定した。 Xが応訴しなかったとすると,当該判決が日本で効力を有するために必要な甲国裁判所の国際 裁判管轄権を基礎付ける事由は存在するか。XとYは本件契約の締結時に契約準拠法として甲国 法を明示的に指定し,かつ,甲国民法Q条は「金銭債務の弁済は債務者の現在の住所においてし なければならない」と定めているものとして答えなさい。