平成26年 司法試験 論文式試験 経済法 第1問
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〔第1問〕(配点:50) A社は,消費財甲製品のメーカーである。 甲製品の用途には,乙製品を用いることもできるが,乙製品は甲製品に比べて品質が大きく劣る ことから,甲製品の代わりに乙製品が用いられることはほとんどない。甲製品のメーカーは,日本 国内には,A社のほか3社存在している。甲製品は,外国でも製造・販売されているが,外国製の 甲製品は日本へほとんど輸入されていない。 日本国内では,甲製品の最終利用者には大口の利用者と小口の利用者とが存在するが,大口利用 者向けと小口利用者向けとでは,甲製品の取引数量や取引価格などに大きな差が存在している。日 本における甲製品の販売全体に占める割合では,数量,金額とも大口利用者向けが圧倒的割合を占 めている。 甲製品は,大口利用者向けには,甲製品のメーカーが大口利用者向け販売業者に対して販売し, 大口利用者向け販売業者が大口利用者に対して販売している。小口利用者向けには,甲製品のメー カーがホームセンター等の量販店に対して甲製品を販売し,量販店がその甲製品を小口利用者に対 して販売している。甲製品を小口利用者向けに販売するほとんどの量販店では,A社を含め全ての メーカーの甲製品が販売されている。大口利用者向け販売業者の中には,自らの判断でA社の甲製 品のみを取り扱う販売業者も存在するが,多くの大口利用者向け販売業者は複数のメーカーの甲製 品を取り扱っている。A社の甲製品は,特に大口利用者の間で広く認知され,強いブランド力を有 しており,大口利用者向け販売業者においては,甲製品の品揃えの中にA社の甲製品を相当割合確 保しておくことが重要となっている。 国内の甲製品の販売シェアは,甲製品全体,大口利用者向け,小口利用者向けのいずれにおいて も,長期にわたり変化がなく,A社は,1位でおおむね70パーセントのシェアを占め,高水準の 価格を維持してきた。 甲製品の国内需要は,長期にわたり低迷していたが,一昨年の終わり頃以降,経済をめぐる大き な環境の変化に伴い,その需要が急速に高まってきたことから,これまで甲製品を製造・販売した ことのない複数のメーカーが,国内で新規に甲製品を製造・販売することを計画するに至った。ま た,既存の甲製品のメーカーも,従来,需要低迷のため遊休状態であった製造設備を利用し,甲製 品の製造を増大し始めている。A社は,このような大きな環境の変化に直面して,従来安定的に維 持してきた自社の甲製品の販売シェアや販売収益に大きな影響が出てくるという危機感を抱くに至 った。また,A社は,自社製品の販売先を確保することにより,自社の遊休製造設備をフル稼働さ せ,甲製品の製造コストを大幅に削減したいと考えた。 そこで,A社は,甲製品の大口利用者向け販売業者のうち,A社以外のメーカーの甲製品も併せ 取り扱ってきた取引先販売業者の過半を占める販売業者との間において,当該販売業者の甲製品の 購入全体に占めるA社の甲製品の割合の多寡に応じて販売価格からの割戻金を支払うこととし,そ の割合が高くなるにつれて高額の割戻金を支払い,割合が100パーセントとなる場合には最高額 の割戻金を支払うことを約束するに至った。また,A社は,従来A社の甲製品のみを取り扱ってき た者との間で,今後も継続してA社の甲製品のみを取り扱う約束を取り付け,上記最高額の割戻金 を支払うこととした。 その後,国内で新規に甲製品を製造・販売することを計画していたメーカーは,その計画を取り やめた。また,A社以外の甲製品の既存メーカーでは,取引先販売業者の数が減少し,取引数量も 減少している。 〔設 問〕 上記のA社の行為について,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止 法」という。)上の問題点を分析して検討しなさい。なお,課徴金の賦課につき言及する必要はな い。