平成25年 司法試験 論文式試験 国際関係法(私法系) 第2問
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〔第2問〕(配点:50) Xは甲国人であり,Yは甲国法に基づき設立されて甲国に主たる営業所を有する会社である。X は,Yとの間で勤務期間の定めのない雇用契約(以下「本件雇用契約」という。)を締結した。そ の後,Xは,Yの命令に従い甲国内にあるYの複数の支店において勤務した後,日本と乙国におけ る営業を統括する東京支店への配置転換を命じられた。 設問1と設問2は,各々独立したものとして答えなさい。 〔設 問〕 1.Xは,東京支店において継続して勤務していたが,来日後6年が経過した時に,Yから理由を 告げられることなく突然解雇された。そこで,Xは,Yによる解雇は日本の労働契約法(平成1 9年法律第128号)第16条の定める「権利を濫用したもの」であって無効であると主張して, Yに対して本件雇用契約上の地位確認と賃金の支払を求める訴えを,日本の裁判所に提起した。 XとYは,本件雇用契約を締結した際,「本契約から発生する一切の紛争については甲国の裁判 所が専属的な管轄権を有し,かつ,本契約は甲国法により規律され解釈される」旨の書面による 合意をしていた。 なお,甲国法は解雇・退職の自由を原則とし,甲国法上,使用者は勤務期間の定めのない雇用 契約をいつでも何らの理由もなしに解約することができ,また,それに対して権利濫用を含む特 段の法的規制もない。 (1) Yは,甲国裁判所が専属的管轄権を有する旨の合意がある以上,日本の裁判所はXの訴えに ついて国際裁判管轄権を有していないと主張している。この主張の当否について論じなさい。 (2) 国際裁判管轄権に関する合意がなく,かつ,Yの応訴がないとした場合に,民事訴訟法第3 条の3に列挙されている管轄原因を除いて,日本の裁判所の国際裁判管轄権を基礎付ける原因 は存在するか。 (3) 本件雇用契約の準拠法が甲国法であるとした場合に,日本の労働契約法第16条の規定は適 用され得るか。 2.Xは,Yの東京支店に配置転換後,日本と乙国の顧客に対する営業の責任者として好成績を上 げていたが,来日後6年が経過した時にYを任意に退職した。Yは,Xが退職後に顧客を奪取す ることを懸念し,Xとの間で次の1から3の合意を含む競業避止特約(以下「特約」という。) を締結し,YはXに競業避止の代償として特別退職金を支払った。1「Xは,2年間,日本と乙 国における同業他社には就職しない」,2「Xは,特約に違反した場合には,特別退職金を返還 する」及び3「特約から発生する一切の紛争については,甲国又は日本の裁判所が管轄権を有す る」。しかし,Xは,退職の約半年後,乙国に主たる営業所を有し,Yと競業関係にある会社A の勧誘に応じて,Aと雇用契約を締結するに至った。Xは,Aの乙国営業所に勤務するため,乙 国に住所を有している。 Yが,特約に基づき,Xに対して特別退職金の返還を求める訴えを日本の裁判所に提起した場 合,日本の裁判所は国際裁判管轄権を有するか。前記3の管轄権に関する合意がなかった場合と 対比して論じなさい。