平成25年 司法試験 論文式試験 環境法 第2問
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〔第2問〕(配点:50) 環境影響評価について,以下の設問に答えよ。 〔設問1〕 A県は,同県B市に3000メートルの滑走路を持つ本件空港を設置する事業(環境影響評価 法の第一種事業に当たる。)を計画し,2003年,B市内のC岳の北側陸上案を採用すること を決めた。A県は,2005年,本件空港設置事業について環境影響評価法に基づく環境影響評 価手続を開始した。この環境影響評価手続の中では,C岳の北側陸上案しか対象とされず,複数 案は検討されていなかった。本件空港予定地周辺の海域には種々の希少なさんご礁が形成されて いた。 2008年,A県は,本件空港の許可権者である国土交通大臣宛てに環境影響評価書(以下「本 件評価書」という。)を送付し,国土交通大臣は,環境大臣宛てにその写しを送付して意見を求 めた。国土交通大臣は,環境大臣の意見の内容を勘案した上でA県に対して,本件評価書につい ての環境保全の見地からの意見を書面により述べた。その後,A県は,本件評価書について補正 を行い,国土交通大臣に対し,補正後の環境影響評価書(以下「本件補正書」という。)を送付 し,国土交通大臣は,環境大臣宛てにその写しを送付した。A県は,環境影響評価書を作成した 旨その他の事項を公告するとともに,本件評価書等を所定の期間,縦覧に供した。 国土交通大臣の本件評価書についての環境保全の見地からの意見の中では,本件事業実施区域 への降雨及び流入水が海域に浸出する場合の水質及び水量並びにそれによるさんご礁への影響に ついて把握し,その結果を評価書に記載することが求められていたが,本件補正書の中では答え られていない。 その後,A県は,本件空港の設置の許可の申請をし,2009年,国土交通大臣は,本件空港 の設置を許可する旨の処分を行った。 これに対し,本件空港予定地の敷地の一部の土地を所有するDは,A県が実施した環境影響評 価手続に問題があったとして許可の取消訴訟を提起したいと考えている。Dはどのような主張を することが考えられるか。 〔設問2〕 複数案の検討に関して,2011年に改正された環境影響評価法及びその後に改正された「基 本的事項」(環境省告示)(【資料1】参照)ではどのように扱われているか。その趣旨はどこに あるか。 〔設問3〕 【資料2】は,2008年に制定された生物多様性基本法の規定である。 (1) 2011年の環境影響評価法の改正によって導入された仕組みは,生物多様性基本法第25 条とどのような関係にあるか。 (2) 生物多様性基本法が想定する環境影響評価の仕組みは,環境基本法においてどのように位置 付けることができるか。 【資料1】 環境影響評価法第3条の2第3項,第3条の7第2項,第11条第4項,第12条第2項及び第3 8条の2第2項の規定による主務大臣が定めるべき指針並びに同法第4条第9項の規定による主務大 臣及び国土交通大臣が定めるべき基準に関する基本的事項(環境庁告示第87号(平成9年12月1 2日)。最終改正:平成24年4月2日環境省告示第63号)(抜粋) 第一 計画段階配慮事項等選定指針に関する基本的事項 一 一般的事項 (1) 第一種事業に係る計画段階配慮事項の選定並びに調査,予測及び評価は,法第3条の2第 3項の規定に基づき,計画段階配慮事項等選定指針の定めるところにより行われるものであ る。 (2) 計画段階配慮事項の範囲は,別表(略)に掲げる環境要素の区分及び影響要因の区分に従 うものとする。 (3) 計画段階配慮事項の検討に当たっては,第一種事業に係る位置・規模又は建造物等の構造 ・配置に関する適切な複数案(以下「位置等に関する複数案」という。)を設定することを基 本とし,位置等に関する複数案を設定しない場合は,その理由を明らかにするものとする。 (4) 計画段階配慮事項の調査,予測及び評価は,設定された複数案及び選定された計画段階配 慮事項(以下「選定事項」という。)ごとに行うものとする。(以下略) 【資料2】 生物多様性基本法(平成20年6月6日法律第58号)(抜粋) (事業計画の立案の段階等での生物の多様性に係る環境影響評価の推進) 第25条 国は,生物の多様性が微妙な均衡を保つことによって成り立っており,一度損なわれた生 物の多様性を再生することが困難であることから,生物の多様性に影響を及ぼす事業の実施に先立 つ早い段階での配慮が重要であることにかんがみ,生物の多様性に影響を及ぼすおそれのある事業 を行う事業者等が,その事業に関する計画の立案の段階からその事業の実施までの段階において, その事業に係る生物の多様性に及ぼす影響の調査,予測又は評価を行い,その結果に基づき,その 事業に係る生物の多様性の保全について適正に配慮することを推進するため,事業の特性を踏まえ つつ,必要な措置を講ずるものとする。 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]