平成25年 司法試験 論文式試験 経済法 第2問
問題文と公式資料を一つにまとめ、出題の趣旨と採点実感の要点をすぐ確認できる学習ページです。
〔第2問〕(配点:50) A協会は,水上スポーツ用の船舶である商品乙(以下「乙」という。)の普及と発展を目的とし て設立された団体であり,乙のメーカーであるX1-X5の5社及び乙を取り扱う販売店のほとん ど全てがその会員となっている。A協会は規約で総会,理事会等を設けており,メーカー5社及び 主要な販売店数社が理事会のメンバーになっている。 メーカー5社の合計シェアは,日本国内で販売される乙のほとんど全てを占めている。また,乙 の大部分は,メーカーから販売店を経てユーザーに販売されている。なお,乙は,用途・機能が特 定されていることから,他に代替品は存在しない。また,乙には大型と小型の区別があり,両者の 小売価格には約1.5倍程度の開きがあるが,いずれも,ユーザーにとっての基本的な用途・機能 に差異は存在しない。 乙は,マリンスポーツの人気の高まりとともに売上げを伸ばしてきたが,販売台数の増加ととも に,船舶の動作不良とユーザーの操縦ミスが複合した転覆や衝突事故が増加し,これがマスコミで も報道されるようになった。また,事故時における損害賠償をめぐるトラブルが多発するようにな った。そこで,A協会は,これらの事態に対処して乙に対する信頼を維持するための方策を理事会 で話し合い,以下のような内容の「対策要綱」をまとめて,これを実施しようと考えている。 (1) ユーザーによるメインテナンスの不備,並びに長期間使用されることによる船舶の経年劣化が 動作不良発生の原因であると考えられたことから,メインテナンスの必要性の認識を喚起すると ともに船舶の使用期間の適正化を図ることを目的として,これまでは明確に定められていなかっ た乙の「耐用年限」についての自主基準を設けることとする。 従来,乙の平均使用期間は約8年であったが,5,6年を経過する頃から事故発生率が上昇す るというデータが得られたこと,実際に多くの会員メーカーが,修理や保守の経験に基づき,目 安となる耐用年限を5年程度としていたことから,適切な保守・点検により安全性が維持できる 期間として,耐用年限の自主基準を一律に5年間とする。 その場合,製品の耐用年限を設定するか否か,また耐用年限を設定する場合に上記の自主基準 に従うか否かについては,会員メーカーの自由とし,これより長い,又は短い耐用年限の製品を 製造し販売することは制限しないこととする。 (2) 乙については,賠償責任保険の加入者が少ないことが,事故時に損害賠償をめぐるトラブルが 多発する主因だと考えられたことから,トラブル防止のため,会員メーカーは,保険会社との間 で,メーカーが保険料を負担する乙向けの商品付帯賠償責任保険Wに係る契約を締結し,自社の 乙にこの保険Wを付帯して販売しなければならないこととする(注)。 乙に付帯する保険Wの保険期間は1年とし,どの保険会社の保険を選択するかは,会員メーカ ーの自由に任せる。また,メーカーが負担する保険料を乙の卸売価格に転嫁するかどうかについ ても,各社の判断に委ねることとする。なお,現在,保険Wを取り扱っている保険会社は2社で あるが,本対策要綱の実施を念頭に置いて,更に数社が新たに取扱いを計画している。 〔設 問〕 上記の「対策要綱」(1),(2)について,独占禁止法上の問題点を分析して検討しなさい。 (注)乙向けの商品付帯賠償責任保険Wは,メーカーを保険契約者,当該メーカーの乙を購入した ユーザーを被保険者とする保険で,この保険が付帯された乙を購入したユーザーは,保険料を 負担せずに補償を受けることができる。 論文式試験問題集[知的財産法]