平成25年 司法試験 論文式試験 経済法 第1問
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〔第1問〕(配点:50) X社は,自動車の重要な構成部品甲(以下「甲」という。)のメーカーであり,主な取引先は, 日本国内の自動車メーカーである。X社の甲の日本国内における販売シェアは40%であり,甲の メーカーは日本国内には他に5社存在している。なお,甲に代替し得る製品は存在しない。 X社は,最近,甲の革新的な新しい製造方法(以下「新製造方法α」という。)の単独開発に成 功し,そのノウハウ技術(注)を保有している。新製造方法αは,旧製造方法に比べて,甲の品質 を大きく向上させ製造コストも大幅に削減させるものであることから,短期間のうちに,旧製造方 法は全て新製造方法αに取って代わられるものと予測された。もっとも,開発した新製造方法αを 実施するためには,別途,専用の製造装置が必要であった。しかし,X社は,製造装置メーカーで はなく,当該製造装置を単独では開発できないため,従来から株式の相互保有関係にあった製造装 置メーカーのY社と当該製造装置を共同開発することとし,Y社に対して製造装置の開発に必要な 新製造方法αのノウハウ技術を開示した上で,共同開発を行った。X社及びY社による共同開発の 結果,新製造方法α向けの製造装置を製造するための技術の開発に成功し,Y社は,当該開発した 技術を用いた新製造方法α向けの製造装置βを製造することにも成功するに至った。 甲の製造装置メーカーは,日本国内にY社の他に4社存在する。現時点では,X社及びY社が共 同開発した新製造方法α向けの製造装置βの競合品は存在しないものの,甲の製造装置の分野は, 技術開発が活発な分野であり,他の4社の技術開発能力に照らして,少なくとも数年のうちには, 新製造方法α向けの代替製造装置を製造するための新技術の開発を行うとともに,当該新技術を用 いた新製造方法α向けの代替製造装置を製造する見込みが高い。 X社は,今後,新製造方法αのノウハウ技術を甲の他のメーカーにも利用許諾(以下「ライセン ス」という。)することを考えているが,ライセンス先のメーカーが,ライセンスを受けた新製造 方法αのノウハウ技術を基に甲の他の製造装置メーカーと共同して代替製造装置に係る新技術の開 発を行う場合には,甲の他の製造装置メーカーに新製造方法αのノウハウ技術が漏えいするおそれ があると考えている。また,X社は,Y社と行った製造装置βの共同開発に要した費用を回収する には数年掛かると考えている。そこで,X社は,新製造方法αのノウハウ技術の秘密性を保持する とともに,Y社との共同開発に要した費用を回収するために,甲の他のメーカーに対し新製造方法 αのノウハウ技術をライセンスするに際し,新製造方法α向けの製造装置を,Y社が製造する製造 装置βに限定し,Y社から購入することを義務付けることを計画している(以下「本件計画」とい う。)。 〔設 問〕 X社の本件計画について,私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」 という。)上の問題点を分析して検討しなさい。 (注)ノウハウ技術とは,公知となっていない技術的知識及び経験又はそれらの集積であって,そ の経済価値を事業者自らが保護・管理するものを指し,おおむね,不正競争防止法上の営業秘 密のうちの技術に関するものをいう。