平成24年 司法試験 論文式試験 国際関係法(私法系) 第2問
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〔第2問〕(配点:50) Yは,甲国に主たる営業所を有する甲国の会社である。Yは,インターネット上に法人及び個人 顧客向けに英語のほかに日本語表記のウェブサイト(以下「本件サイト」という。) を開設し, 本 件サイトを通じて日本及びその他の国において自社製品であるG等の購入の問合せ及び購入ができ るようにしている。Yは,日本の弁護士を日本における代表者として定めて外国会社としての登記 をし,本件サイトを通じた継続的な取引を行っているが,日本には営業所や財産を一切有していな いものとして,以下の設問に答えなさい。 〔設 問〕 1.Xは,日本に主たる営業所を有する日本の会社である。Xは,本件サイトからGの購入の問合 せをし,Yの主たる営業所から日本に派遣された担当者と交渉の上,Yと東京において売買契約 を締結した(以下「本件売買契約」という。)。Xは,Gを受領してYに代金を支払ったが,Gに 瑕疵があったため,損害を被った。Xは,Yに対して債務不履行を理由として損害賠償を求める 訴えを日本の裁判所に提起した。甲国は,国際物品売買契約に関する国際連合条約(平成20年 条約第8号。以下「条約」という。) の締約国ではないとして,次の問いに答えなさい。 (1) XとYとの間には裁判管轄に関する合意はなく,民事訴訟法第3条の3第1号に掲げる管轄 原因が日本にないとした場合に,この訴えに関して日本の裁判所の国際裁判管轄権を基礎付け る事由はあるか。 (2) 法の適用に関する通則法(平成18年法律第78号)によれば,本件売買契約の準拠法が日 本法となるとすると,日本の裁判所は,Xの請求につき条約を適用することができるか。 2.日本に常居所を有する個人Zは,自宅のパソコンを使って私用のために本件サイトの個人顧客 向けページを通じてGを購入する意図で注文を送信して代金を支払った。ところが,本件サイト では注文の送信前に申込内容の確認を行う措置が講じられておらず,そのため,Zは,申込内容 を確認できないままGと類似した別の商品Hの注文を送信してしまっていた。その結果,Yから HがZ宅に送られてきた。 日本法には,事業者のウェブサイトにおいて消費者の意思表示の際にその内容を確認する措置 が講じられていない限り,当該ウェブサイトを通じて締結された電子消費者契約の消費者の意思 表示に民法第95条の要素の錯誤があった場合に,消費者に同条ただし書の重大な過失はないも のと扱うP法Q条の強行規定がある。他方,甲国法には,日本の民法第95条と同様の内容の要 素の錯誤に関する規定はあるが,上記のような電子消費者契約の特則に係る規定はない。本件サ イト上には「商品の購入に関するお客様と弊社Yとの間に起きるあらゆる紛争については,甲国 の国内法がこれに適用されることに同意していただいたものとします。」との表示があり,この 表示に基づきZとYが甲国法を準拠法として合意していたとすると,日本の裁判所は,ZがYに 支払った代金の返還をめぐる争いについてP法Q条を適用することができるか。