平成24年 司法試験 論文式試験 環境法 第2問
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〔第2問〕(配点:50) A県B町は,瀬戸内海に面した湾内に位置し,古くから海上交通の要衝として栄えた港町である。 海岸には,中世からの港湾設備群や壮麗な神社等の歴史的建造物が並び,それらが良好な状態で保 存されている。同じ湾内の,B町の対岸側にあるA県C町からは,B町海岸の歴史的建造物があた かも海に浮かんでいるように見えるため,C町からの景観は名勝として知られ,C町住民は,その 特徴的な歴史的景観を日常的に遠望していた。 A県は,事業者として,県内の他地域における幹線道路の慢性的な交通渋滞を緩和するため,上 記湾内の公有水面を埋め立て,埋立地に新たな地上式の県道(以下「計画道路」という。)を設置 する事業(以下「本件事業」という。)を計画した。計画道路は,C町を通る予定である。本件事 業による湾の埋立てにより,B町の歴史的建造物が並ぶ海岸地先海面も埋め立てられることとなっ た。本件事業の計画に際し,埋立工事を行わず,別地区にトンネルを掘削する代替案も検討された が,代替案では,幹線道路の交通混雑解消の効果が,埋立工事を行う場合の約70%であるとして, 採用されなかった。 なお,A県は,政府が瀬戸内海環境保全特別措置法第3条第1項に基づき策定した「瀬戸内海環 境保全基本計画」に基づいて,「瀬戸内海環境保全に関するA県計画」を策定しており,これには, 「瀬戸内海の自然景観と一体をなしている史跡,名勝,天然記念物等については,その指定,管理 等に係る制度の適正な運用等によりできるだけ良好な状態で保全するよう努めるものとする。」と の規定がある。 A県は,A県知事に対し,公有水面埋立法第4条第1項に基づき埋立免許を申請し,A県知事は, A県に対し,公有水面の埋立免許を付与した。その後,本件事業による埋立工事が竣工した結果, C町からは,B町の歴史的建造物が海に浮かんでいるようには見えなくなり,特徴的な歴史的景観 が損なわれた。 〔設問1〕 C町に住むXは,長年,B町の歴史的建造物の見える景観を日常的に楽しんでいたが,本件事 業による埋立てにより,特徴的な歴史的景観が損なわれ,精神的苦痛を感じているため,訴訟を 提起して,損害の賠償を受けたいと考えている。 (1) Xは,誰に対してどのような請求ができるか。 (2) 当該訴訟において予想される争点について,Xがどのような主張をすべきかを,予想される 被告側の反論にも言及しつつ,論ぜよ。 〔設問2〕 本件事業に係る計画道路の供用開始後,当該道路の交通量が増加し,C町では当該道路を通行 する自動車の騒音が激しくなり,Xの居住地では,昼夜の各環境基準を5デシベル超える騒音が 毎日のように測定されるようになった。Xは,生活妨害による精神的苦痛を感じているため,訴 訟を提起して,損害の賠償を受けたいと考えている。 (1) Xは,誰に対してどのような請求ができるか。 (2) 当該訴訟において予想される争点について,Xがどのような主張をすべきかを,予想される 被告側の反論にも言及しつつ,論ぜよ。 【資 料】 ○ 公有水面埋立法(大正10年4月9日法律第57号)(抄) 第2条 埋立ヲ為サムトスル者ハ都道府県知事ノ免許ヲ受クヘシ 2,3 (略) 第4条 都道府県知事ハ埋立ノ免許ノ出願左ノ各号ニ適合スト認ムル場合ヲ除クノ外埋立ノ免許ヲ 為スコトヲ得ズ 一 国土利用上適正且合理的ナルコト 二 其ノ埋立ガ環境保全及災害防止ニ付十分配慮セラレタルモノナルコト 三 埋立地ノ用途ガ土地利用又ハ環境保全ニ関スル国又ハ地方公共団体(港務局ヲ含ム)ノ法律 ニ基ク計画ニ違背セザルコト 四 埋立地ノ用途ニ照シ公共施設ノ配置及規模ガ適正ナルコト 五,六 (略) 2,3 (略) ○ 瀬戸内海環境保全特別措置法(昭和48年10月2日法律第110号)(抄) (目的) 第1条 この法律は,瀬戸内海の環境の保全上有効な施策の実施を推進するための瀬戸内海の環境 の保全に関する計画の策定等に関し必要な事項を定めるとともに,特定施設の設置の規制,富栄 養化による被害の発生の防止,自然海浜の保全等に関し特別の措置を講ずることにより,瀬戸内 海の環境の保全を図ることを目的とする。 (瀬戸内海の環境の保全に関する基本となるべき計画) 第3条 政府は,瀬戸内海が,わが国のみならず世界においても比類のない美しさを誇る景勝地と して,また,国民にとつて貴重な漁業資源の宝庫として,その恵沢を国民がひとしく享受し,後 代の国民に継承すべきものであることにかんがみ,瀬戸内海の環境の保全上有効な施策の実施を 推進するため,瀬戸内海の水質の保全,自然景観の保全等に関し,瀬戸内海の環境の保全に関す る基本となるべき計画(以下この章において「基本計画」という。)を策定しなければならない。 2,3 (略) (瀬戸内海の環境の保全に関する府県計画) 第4条 関係府県知事は,基本計画に基づき,当該府県の区域において瀬戸内海の環境の保全に関 し実施すべき施策について,瀬戸内海の環境の保全に関する府県計画(以下この章において「府 県計画」という。)を定めるものとする。 2~5 (略) (埋立て等についての特別の配慮) 第13条 関係府県知事は,瀬戸内海における公有水面埋立法(大正10年法律第57号)第2条 第1項の免許又は同法第42条第1項の承認については,第3条第1項の瀬戸内海の特殊性につ き十分配慮しなければならない。 2 (略) 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]